知財から見える世界:第6回 知的財産とベンチャー
個人あるいは企業が研究開発の結果、新たな技術を見つけ特許を取得したとしても、それをビジネスに繫げるためには、様々なリソースが必要となる。発明がアイデア商品のようなものであれば別だが、iPS細胞、LED、医薬品、電機品などでは実用化までには実験を繰り返し、安定した性能と採算性が確保できて初めてビジネスとして検討されることになる。この最も初期の段階では、果たして技術がモノになるかどうか、どの程度の費 […]
旅と乗りもの:第1回 「小さな陸橋」
小学校へ上がる前、神奈川県二宮という町の畑のなかの古い一軒家に、1年ほど住んだ。歩いて国道へ出るその途中に東海道線をまたぐ小さな陸橋があって、外出するときは必ず渡った。幼稚園からの行き帰り、私はいつもしばらくここで立ち止まり、列車が通過するのを待った。 陸橋の上からは、さまざまな列車や電車が見えた。流線型の電気機関車EF58が牽引し展望車を連結したうす緑色の特急「つばめ」と「はと」。博多行き寝 […]
知財から見える世界:第5回 知的財産の金銭化
膨大な研究開発費をかけた知的財産もそのままでは宝の持ち腐れである。特許を取得するためには出願料もかかる上に、特許を維持するためには特許料を払い続ける必要がある。特許は一国内だけで成立するため、海外でも特許を成立させるためには、海外での出願も必要となる。通常は、ある国で特許を出願すると共に、国際出願をし、特許出願の優先権を維持しつつ、特許を各国で出願していく。国際出願にしても、各国移行にしても、翻 […]
アメリカを探して:第3回 携帯電話、オバマケア、憲法
アメリカ合衆国最高裁判所は、毎年10月に開廷され翌年の6月下旬まで審理を続ける。この期間を開廷期(Term)と呼ぶ。7月はじめには長い夏休みに入り、10月に次の開廷期がやってくるまで、9人の判事たちはそれぞれ本を書いたり講演をしたり、あるいは避暑にでかけたり、思い思いに過ごす。 最高裁は下級審判決からの上告をすべて取り上げるわけではない。予備的な審査を経て取り上げると決めた事件は、まず当事者の […]
ビル・ブライソン『人類が知っていることすべての短い歴史』 /楡井浩一訳(NHK出版)
ビル・ブライソン 『人類が知っていることすべての短い歴史』 /楡井浩一訳(NHK出版) 小学生のころ、夏休みは退屈で困った。することがない。動くと暑い。手持ちの本は大方読んでしまった。昆虫採集なんかまっぴらだ。宿題はしたくない。新学期前の数日が悲惨な状況になるとわかっていて、やる気が出ない。蝉の鳴き声がうるさい。おなかが減った。夕食までまだ時間があるなあ。しょうがないから、何もしな […]
知財から見える世界:第4回 知的財産権とは
知的財産には、特許だけではなく営業秘密、製造ノウハウ、著作権、商標、デザインなどいろいろなものが含まれる。日本の知的財産基本法では、「知的財産」とは、発明、考案、植物の新品種、意匠、著作物その他の人間の創造的活動により生み出されるもの(発明又は解明がなされた自然の法則又は現象であって、産業上の利用可能性があるものを含む)、商標、商号その他事業活動に用いられる商品又は役務を表示するもの及び営業秘密 […]
アメリカを探して:第2回 それぞれの歴史問題:日本、イスラエル、アメリカ
昨年12月末に安倍晋三首相が靖国神社を参拝してから、早いものでもうすぐ1年経つ。当時、日米関係は多少ぎくしゃくした。もともと安倍総理が好きではない日米の進歩派は、それ見たことかと中国や韓国と一緒に非難したが、それだけではない。日米関係を重要視し日本に好意的なアメリカの政権内外の人たちも、当惑を隠さなかった。より強固な日米関係をめざすいろいろな努力に、靖国参拝が水を差したからだ。「未来を語ろうと言 […]
知財から見える世界:第3回 特許訴訟の最前線
最近、日本でも特許訴訟が増えてきた。しかし、米国では年間約6,000件、中国が約9,000件、EUで約3,000件の特許訴訟があるのに対して日本では300件にも満たない。中国で特許訴訟が多いのは、膨大な数の特許が成立し転々流通していることと、模倣品の横行という特殊事情による。中国は特許制度、訴訟制度そのものが法的安定性を欠いている部分もあるため、訴訟件数が多くてもあまり参考にならない。日本企業に […]
知財から見える世界:第2回 特許と職務発明
会社や大学、研究機関で職務中に成された発見は一体誰のものだろうか?当然、発明した本人の才能はあろうが、会社のお金で発明できる環境や設備を作り、給料を支払ってきた事実も無視はできない。昨年、閣議決定された「知的財産政策に関する基本方針」では、「職務発明制度の抜本的な見直し」が盛り込まれ、特許法第35条の「職務発明」規定改正の議論が行われてきた。職務発明の対価については、2001年に、中村修二カリフ […]
サイモン・ジェンキンス『短いイギリスの歴史』(未邦訳)
『A Short History of England』Simon Jenkins (Profile Books Ltd.) ロンドンの国会議事堂(ウェストミンスター宮殿)を知らない人はいないだろう。テムズ川ぞいにそびえるビッグベンという大きな時計塔は、メアリーポピンズやピーターパンなど、イギリスの童話を題材にした映画にも登場する。上下両院、特に衆議院(庶民院とも訳される)の本会議 […]
知財から見える世界:第1回 TPPと知的財産
環太平洋パートナーシップ(TPP)協定交渉が大詰めを迎えているが、交渉国が厳しく対立している交渉テーマのひとつに知的財産権がある。米国は、TPPを21世紀型のハイブリッドな貿易・投資協定と位置づけており、自由な物・サービスの移動のためには、域内で知的財産権が米国と同じように保護されることが不可欠だと主張している。これに対して途上国は、知的財産権の保護強化は途上国の負担を増すと反対している。 知 […]
バージニア・リー・バートン『ちいさいおうち』(岩波書店)
バージニア・リー・バートン『ちいさいおうち』 (岩波書店) もう今は昔のこと、上の息子が小学校に入る前、生まれて初めて家を買った。当時ワシントンの法律事務所につとめていて、そのままアメリカに住みつきそうな気がした。それなら家を買わねばなるまい。春らしい春の一日、知り合いが紹介してくれた不動産屋の婦人に案内され、ワシントンの川向こう、北部ヴァージニアの住宅地で家を見て回った。 あち […]